第1章 頭の上の暗号

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第1章 頭の上の暗号

そよ風が吹く度に、桜の花びらが散っていく。窓から見える桜の雨を見ながら、竹村日和(たけむらひより)は図書室で友達の小野瀬里香(おのせりか)と数学の課題に取り組んでいた。高校2年生になったばかりなのに、すでに山ほど課題が出されていた。 「こんなの終わらないよ。あのおにぎり、自分はやらないことをいいことに」 課題の多さに嫌気がさした瀬里香が、椅子に持たれながら、数学の先生のあだ名を口にした。数学の先生は岸辺という名前だが、顔がおにぎりに似ていることから、陰でおにぎりと呼ばれている。 「たしかに多いね。1問解くだけで時間かかっちゃうよ」 日和が微笑みながら答えると、瀬里香は共感しながら、答えを写す作業を始めた。途中式が長い分、答えを写しても時間がかかる。嫌々シャーペンを動かす瀬里香を見て、日和も自身の課題を進めた。日和は嫌々ながらも、いきなり答えを写すのは気が引けるため、できるだけ自力で問題を解いた。
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