夕立と赤信号

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 「なるほど。これからもずっと後悔しないと思いますか?」  「ええ、不思議と。」  そう言って彼は目を細めて口角をあげた。  「それから後のことは、ご存知だと思いますよ。」  「はい。起訴された後精神鑑定を受け、その結果裁判は打ち切りに。確か奥様とは事件のすぐ後に離婚されて、こちらに引っ越して来られたんですよね。」  「そうです。私がお話しすることは、以上となります。」  「ありがとうございます。どれだけ調べても詳細が不明で・・・・・・。」  「それはそうでしょう。私がこんなに詳しく話すのは、今日が初めてですから。」  「・・・・・・なぜですか?なぜ、こんないっぱしの雑誌記者に。」  「秋になったら、手術を受けるんです。そんなに、良くないそうです。手術もうまくいくかどうか・・・・・・。本当の、子細を語っておきたいと思い始めていたそんな時、あなたから連絡が。それで、あなたに話そうと思ったんです。ただ、それだけです。」  彼は遠い目をした。私はなんとなく後味が悪かった。  彼には何が見えているのだろうか。  「そうですか。本日は、貴重なお話をありがとうございました。」  「ええ、はい。」
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