プロローグ

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 大人になるって、どういうことだろう?  中学生の未熟な精神では、それは遠い国で起きる事柄のように感じられた。  大人になる。 即ち、子供じゃなくなる。  周りを見ても(少なからず小学生らしい余韻は捨てているものの)大人だなと感じる友人はいない。 僕──緑原暁(みどりはらあきら)自身を含めて、全員が子供のままだ。  何かきっかけがあるのだろうか。  僕たちはそれに気付けていないだけなのだろうか。  あるいは……。  分からない。  分からないからこそ、今は考えるべきでないと脳が勝手に思考を追いやってしまう。  中学二年生。 部活や勉強や遊びに打ち込むことの方が、何よりも優先的で大事なのだ。  そもそも僕自身が進んで大人になりたいとは願っていないし、 「あのさ、一つ相談があるんだけど」  例えば幼馴染である水橋桃香(みずはしももか)から受けた相談も、大人は “所詮子供の戯言だ” と笑って流した。  そんなの、つまらない。  子供の頃に感じた色を失ってしまうなんて、そんなの。
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