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人間の摂理
英雄としての扱いは、もう懲り懲り。そう姉妹が発言したのをきっかけに、姉妹は自由になった。交換条件として、彼女らの待遇はあまり良いとは言えないものになった。
しかしそれでも二人は幸せだった。幸せに暮らしていた。
姉が、体の衰えを感じ始める前は。
「姉さん、最近息切れしやすくなったけど大丈夫?」
「大丈夫だよ。やっぱりわたしは、元々はただの人だから……だと思う。魔女の力を分け与えられているから遅くなっているとはいえ、わたしはそのうちこのままおばあちゃんになって……死ぬ。今のうちに、一人で生きる方法を考えた方がいいよ」
残酷なほどに、姉妹には違いがあった。しょせん魔女は一人だけなのだ。どうあがいても人は魔女の模造品になるのが関の山。双子の姉の体に闇の力を注いでも、結局それは魔女ではない。
だが、認められなかったのだろう。ずっと一緒に歩んできた姉が、ゆっくりじわじわと死んでゆくのが。
「させない。姉さんは私と生きて私と死ぬの。そのためならいくらでもこの力を使ってみせる。力を注げば……注げば……!」
「まっ……待って、待ってよ! そんなに注ぎ込まれちゃ……」
姉の静止を振り切り、焦った妹は魔女の力を大量に注ぎ込む。ずっとそうすればきっと、一緒に生きられる。そう信じて……
互いの
意識が
飛んだ。
気が付いた時には、姉は消えていた。自分の中で蠢くような力の流れを感じた魔女。嫌な予感がする。そして、急に意識が無い間の記憶が流れ込み、自分が姉の魂を取り込んだことを知った。
「あ、ああ、あああああ! やめて、やめてよもう! どうしてこんなに簡単に幸せが崩れるの!? 戻してよ、戻してよ! 私の姉さんを! じゃなけりゃみんなみんな殺してやる! 消し去ってやる!」
その後に残ったのは、姉を含む多くの人を殺したという魔女の背中にのしかかる十字架だけだった。
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