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孤独と孤独
繰り返される殺戮の日々。どれだけ続ければ気が済むのだろう。どれだけ続ければ、落ち着くのだろう。
世界が憎いだけなのに、なぜ人を殺しているのだろう。そんな空虚な思いを魔女は抱いていた。
自分の内に姉が眠っているような気がした。戻す術は、見つからない。もはや、戻す必要もない。戻さない方がいい。自分には孤独がふさわしい。永く生きてもこのような思いをするだけなら、姉はやはり死ぬ方が楽だった。
そんな時に、たまたま──いや、これは運命的なものだろう──出会った少女がいた。ここで、彼女とボクとの出会いに繋がる。
「お姉さん。名前は、なんて言うの?」
「名前……って?」
「うん、呼べないと困るから教えて。お姉さんが誰なのか、分からなくなるから」
そうだ。こんな会話を最初にしたんだ。懐かしいなあ。涙が出てきそうだ。今となっては、その涙も形而上のものにすぎないけれど。
この時、彼女はどう思っていたのか。ようやく分かった。
名前。そんなものもあった気がする。けれどどうしてか、思い出せない。親と呼び合ったこともない。あの憎き師にも呼ばれたことはない。姉にすらほとんど呼ばれなかった。
自分も呼んでなかったのに、姉の名前はハッキリと覚えている。なのに自分の名前が分からない。
テスプローティス。ああ、違う。これは姉さんの名前なのに。どうしてこの名前ばかり頭に浮かぶんだろう。どうして相手の望む答えが出せないのだろう。憎悪で、私はあらしめられていたの?
その自問自答の末に、誤魔化すように答えたのだった。
「そんなもの、ない。孤独な私に、他と違うものを与えられる必要なんて、ないから……」
今のボクにさえ、この悲しみは理解してあげることはできなかった。
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