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せっかく予定を立てたのに台無しじゃない。
先に立つ課長の後を追って、暖簾の前に立ち尽くす背中にぶつかる。
雨が__本降りになっていた。
まるで、私の気持ちを表しているみたい。
「走るぞ」
駆け出した課長に続いて、私も車まで走ったが、もうびしょ濡れで美術館どころではない。
ラーメン屋にさえ寄らなければ予定通りデートは進み、髪の先まで濡れずに済んだのに。ハンカチの許容範囲越えてるじゃないの。
なんだか、自信がなくなってきた。
行列には並ばないし、あれこれ文句ばかり言うし、挙句に予定を無視してやりたい放題で、雨も降ってくるし__雨は課長のせいじゃない。どちらかというと_。
「お前、雨女じゃないのか?」
「えっ⁉︎」
「この前も雨が降ってきた。俺は晴れ男だしな。濡れた責任取ってもらおうか?」
「責任って__」
「機嫌が直れば晴れるだろ?問題は、どうすれば機嫌が直るか?だ」
私の顔を覗き込むようにして、助手席に身を乗り出す。
雨に濡れた課長の前髪から、一滴、雫が溢れた。
そう思った時にはもう__唇は塞がれていた。
熱のこもったキスに、体が熱くなる。
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