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__あれは、夢だったのだろうか?
あまりに強く望むと夢で叶うというけれど、あの課長の言葉は、幻だったのだろうか。
週末を自宅でゆっくり過ごし、私は月曜日から仕事に復帰した。
「私は課長が好きです」
そう、告白した、ような気がする。けれどそれも自信がなく、それ以上のことはなにも覚えていない。次に目が覚めると課長は居なかった。
悶々とした時間の中、風邪どころではない。
いつもと違う緊張を携え、職場に向かう。
一体、どんな顔で課長に接すればいいのか__。
「先輩‼︎もういいんですか?」
「心配かけてごめん」
「もう、先輩が居ないから課長の機嫌が悪い悪い」
「えっ⁉︎」
「仕事も滞るし、当たり散らすしで大変だったんですから。早く宥(なだ)めて下さいね」
麻里奈が課長のデスクを指差す。
見慣れた後ろ姿があった。
ドクン、と心臓が跳ね上がる。
「課長、おはようございます。お休み頂きましてありがとうございました」
正面に回り、頭を下げた。
「それだけか?」
「えっ?」
「言うことはそれだけか?」
「えっ、と、あの__」
「なにも覚えてないらしいな」
やっぱり私、告白しちゃったの⁉︎
「自分で思い出すんだな。俺からは、とてもじゃないが口にできない」
そう言うと課長は、ほくそ笑んだのだった。
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