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__ジム?
会員制のスポーツジムだ。
こんなビルのど真ん中にあるなんて。
「仕事が終わったあとは、何時でも汗を流しにくる」
受付で鍵をもらい、その時に体験入門を申し込んでくれた。
私も真新しいウェアに着替え、待ち合わせたのはプールの前。
競パン1枚の課長が現れた。
スーツやワイシャツに隠れた上半身は、今にも破裂しそうな筋肉で覆われており、さすがラグビーをしていただけのことはある。
綺麗なフォームで30分ほど泳ぐのを、私はプールサイドから眺めていた。
ふと気づいたことがある。
同じように、課長を見ている視線が__一つや二つではない。
その後、ウエイトトレーニングに移る際も、明らかに目がハートの女性があちらこちらに。中には親しげに話しかけてくる者もいる。
「お前もやってみろ」
ベンチに寝かせられ、バーベルを持つ。
「軽いのにして下さいよ」
「わかった。じゃ、手を離すぞ」
課長が離した途端、あり得ない重みが胸にのし掛かる。
「む、無理です‼︎」
「なんだ情けない。ギブか?ギブなら、お願いですから助けて下さいって言うんだ」
意地の悪い微笑みが、私を見下ろす。
くそっ__絶対に言うもんか‼︎
「__おいマジかよ」
課長が呟く。
あり得ないバーベルを、私が持ち上げたからだ。
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