386人が本棚に入れています
本棚に追加
けれど、路地裏に手を引かれ__。
ドン。
壁に突き飛ばされた。
逃げようにも、課長の腕が通せんぼをし、身動きが取れない。
目の前の課長は、仕事とはまた違った目をしていて。
お酒のせいもあるのか、トロンとしており、指で顎をクイッと持ち上げられた。
「これが俺だ」
キスされるところを、顔を背けて遮った。代わりに頬に課長の唇が__。
「やめて下さい‼︎」
「キスくらいしたことあるだろ?」
「どうしてっ__どうしてこんなことするんですか‼︎」
身を屈めて、課長の壁ドンから逃れた___。
__お前が、好きだからだ」
思わず立ち止まり、振り返った。
「俺のこと__好きなんだろう?」
「嫌いです」
「うそをつくな」
「あなたみたいな人、大嫌いです‼︎」
「俺は自己中で女好きで仕事人間だ。それが俺、北島章吾だ。ありのままの俺を__お前には見せたつもりだ。俺を知りたいなんて寝言、お前は言ってない。ただ俺が、お前に知ってほしかっただけだ、俺という人間を」
どういうわけか、その言葉は胸の深いところに突き刺さった。
切実な思いが伝わってきたからだ。
最初のコメントを投稿しよう!