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脳があったまってきたのか、車内でも会話は和やかになりつつあったが__。
「なんだあの行列。まさか__あれに並ぶのか?」
「そのまさかです。売り切れちゃいますから」
私が休日にいつも足をのばす、スコーン専門店。県外からのお客さんも多く、開店すぐに完売してしまう。
「課長に食べてもらいたかったんです」
2人で並ぶも、課長は仏頂面だ。
デートって、この待ち時間でさえ楽しかったりするのだが、徐々に口数が少なくなってきたかと思うと、トドメに小雨がパラつきだした。
「あの、ここは私が並ぶんで、良かったら課長、向こうのカフェで待ってます?」
「そうか?じゃ、そうするか」
悪びれもなく行ってしまった。
いやいや、ここは並ぶとこだろ?雨、結構、降ってきたじゃん‼︎
それでもなんとかスコーンをゲット。
カフェに走り込むと、課長がカフェラテを手渡してくれた。
ここは気が効くじゃないの。
代わりにスコーンを手渡す。
パクっと一気に口に入れ、コーヒーで流し込む。
「パサパサだな」
顔をしかめる。
そりゃスコーンですもの‼︎
雨に濡れた私の怒り顔に気づいたのか__。
「まぁ、美味いな。美味い美味い」
取って付けたように笑った。
笑え笑え、笑うんだ私。
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