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「まさか、あれにも並ぶんじゃないだろうな?」
先ほどのスコーンとは比べものにならない行列が目に入ってきた。
ここは__プラネタリウム。
以前から行きたかったのだが、なかなか機会がなく。
「大丈夫ですよ。チケットは買ってあるんで」
「ならいいが」
「課長、並ぶの嫌いですか?」
「時間の無駄だ」
バッサリ言い放つ。
その無駄をいかに楽しむかがデートなのに。といいつつ、私も久方ぶりだけど。
指定席につくと、寝心地のいい椅子が待っていた。
館内が暗くなり、天井に星が煌き出す。
正座の紹介や歴史、流れ星は本当に掴めるかというほど近かった。このナレーションの声がまた耳に心地よい。
思わず眠ってしまいそうな__。
私の周りで、小さな笑い声が起きる。
どうやら、誰かが本当に眠ってしまい、イビキをかいているようだ。
無理もないけど、でもデートだとしたら最悪ね。
なんて思っていたが、イビキは私の真横から聞こえてくる?
その音は、ナレーションをかき消してしまうほど。
「課長」
手を伸ばして肩に触れると、一旦はイビキが止まるが、しばらくするとまた笑い声を引き連れて高らかに奏でられる。
もう、私は星どころではなく__。
館内に明かりがついた途端、駆け足で飛び出した。
「なんだ、トイレか?」
呑気に目を擦りながらやってきた課長は、アクビと伸びをしてから言いました。
「星、綺麗だったな」
抑えろ、抑えるんだ私。
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