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ランチを食べれば怒りもおさまるはずだ。ここも並んでいたが、ちゃんと予約してある。
オーガニック中心のコース料理だ。
ナプキンを膝の上にかけ、食事が始まった__。
さすが課長職ともなると、会食や接待があるのか、ナイフとフォークを持つ手は、しなやかだ。
上品にデザートまで平らげ、さっきまで感じていたズレも和らいできた。
「これからの予定は?」
「今から映画を観に行きます。そのあと、パンケーキ屋に行って_ここ、自分で焼くタイプの店なんですよ。それから美術館に行ってから、ご飯を。ガレットのお店か中華のコースか迷ってるんですけど、課長はどっちがいいですか?」
「聞いてるだけで胸焼けしそうだな。行くぞ」
車のカギを手に、そそくさと会計して行ってしまう。
「課長‼︎ここは私が出します‼︎」
「男が一度出した金を引っ込められるか」
なんて、昭和くさいセリフを吐き、せめて割り勘分だけでもという私の夏目漱石も断固として受け取らない。
「別のものを後でたっぷり貰う」
__別の、もの?
車が発進すると、簡単な映画のあらすじを説明した。
きっと課長は、軽い恋愛物は嫌うだろうと、今話題の社会派サスペンスをチョイスしてみた。一応、頷いていた課長だが、急にハンドルを回す。
車は__ラーメン屋に入った。
「腹が減った」
えっ‼︎‼︎‼︎
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