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雨がフロントガラスを叩きつけ__。
私が降らした雨に囲われ、車の中は2人だけの静かな時間が流れる。
激しいようでいて、慈しむような温もり。
「俺が知りたいのは__こういうことだ。デートなんてどうとでもなる。ちなみに、お前のデートにこういとは入ってるのか?」
そう言うと、今度は雨にも負けないキスの嵐が降ってくる。
息もできないくらいの口づけから解放されると、私の肩に置いた手から伸びる指が、私の頬を撫で__。
「デートの相性も大事だが、もっと大事な相性があるだろ?」
「大事な__相性?」
言わんとすることは分かる。分かるけど…。
「ムードが大事か?映画を観てランチを食って、酒でも飲んで、いい感じになってキスから始まる。俺はそんなまどろっこいのは御免だ。今、お前にキスがしたい」
と、唇を押しつけるだけのキスを一度。
「だからお前も、もし俺とキスしたいならすればいい。分かったな?」
頷くのがやっと。
ようやく運転席に座り直した課長がエンジンをかける。
映画は間に合わない、美術館も。お腹もいっぱいだし、何処へ__?
心の問いかけに気づいたのか、課長が私を見て言った。
「相性がいいか確かめないとな」
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