この恋、砕けます!

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__コーヒー? 私はこう見えても、プレミアムサロン担当だ。 窓口に訪れるお客様と、私のもとを直々に訪れるお客様の取引は、桁が違う。いってみれば、銀行の要。 それに伴って、いくつもの資格をとった。 それはもう寝る間を惜しんで勉強して、今の私がある。 コーヒーや胃薬を買いに行くために猛勉強したわけじゃない。 「私、暇そうに見えます?」 「プレサロの予約は午前中に4件だろう?コーヒーくらい買ってこれる。それに他の者はもう窓口についている」 9:00になると同時にシャッターが開いた。途端に窓口が騒がしくなる。 「なら、コーヒー淹れればいいですよね?」 私は背を向けてフロアをあとにした。給湯室で淹れればいい。それも現代では、お茶汲みの強制だと叩かれてるっていうのに。 それなのに課長の声が、しれっと背中にかかる。 「まずいのは飲みたくない。向かいのコンビニで。カフェラテの氷なし。仕方ないから、二つ買ってきてもいい。コーヒーでも飲んで、そのいかり肩を直せ」 課長が差し出す千円札を、乱暴に引っつかんだ。 夏目漱石に罪はないのに、またもや皺くちゃになる。 ああ‼︎私、あいつ嫌い大っ嫌い‼︎ 一週間では計れないが、支店の業績は上がっているらしいと耳に入ってきた。営業ではハッパをかけ、事務に目を光らせ、私を使いっ走りにする…。 今に見てなさいよ。 絶対に仕事で見返してやるんだから‼︎ なにが恋を預けろだ‼︎預けたら破綻して元本割れするっていうの‼︎
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