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今朝のキスがフラッシュバックする。
事もあろうに、課長としての初日のわずか数分前に、女と公衆の面前でイチャコラする無神経さが分からない。
顔は__良い。それは認める。身長は180㎝以上あり、ラグビーだかなんだか挨拶で聞こえてきた。みんなでトライするだとか。体格もいいし、浅黒くて、髪もサイドが刈ってあるけど基本、かきあげられる長さ。
切れ長の目に、すーっと通った鼻筋、唇はどちらかというと薄いけど、なんにしろ仕事ができる男じゃない。
課長に昇進したのも、ワイロかなんか___。
「俺の顔、そんなに好み?」
いつの間にか、目の前に課長が立っていた。
キスマークがついてるとでも言ってやろうかと思ったが__。
「君が__プレサロ?」
「そうですけど」
だったらなんだ?文句あんのか?の意味合いが含まれる口調になってしまった。
プレサロとは__プレミアムサロンの略。銀行業務でいう、大口のお客様担当だ。
短大卒で入社し、3年間の窓口業務を経て、プレサロとなった。サロン__すなわち、個室のこと。とても大きな契約や保険、投資を担当し、25歳になった今、ようやくやり甲斐を見出し始めた頃だ。
それなのに、こいつ__いや課長は言った。
「プレサロのわりに__地味だな」
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