この恋、預けます!

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伸治はナポリタンを、スプーンとフォークで器用に食べ始めた。しかも無音。 女子か‼︎ 思わずツッコミを入れたくなるが、そんな伸治の角ばった横顔を、私の後輩がうっとり眺めている。 そのうちヨダレでも垂らすんじゃないか。 まぁ、麻里奈の気持ちもわからないでもない。 一見、スーツ姿は細身に見えるが、ほぼ筋肉ではないかと疑われるガタイと、短く刈り上げてツンツンに立たせた髪、それなのに顔はジャニ系ときたら、オフィスの女子は放っておかない。おまけに営業で、なかなかの成績だという。 いわゆる体育会系男子。 それなのに食べ方は綺麗とか、ややこしい‼︎ 「そういや新しい課長、俺の大学のOBらしい」 「あらそう」 麺を豪快に啜る。 「大学も主席で、ラグビー部も主将。おまけにモテモテ」 「へぇー」 スープを飲む。グビグビと喉を鳴らし。飲み干す。 まさにその課長を、やっつけるがごとく‼︎ 「真帆は興味ないか」 「そうなんですよ‼︎朝からやり合ってましたし、先輩、お金が恋人ですもんねー」 恋人(お金)も一人前に扱えないくせに‼︎と睨んでやる。 「だな。もうちょいオシャレして、女子女子したほうがいいのに。地味子から脱皮しないと」 __地味? 先ほどどこかで聞いたセリフと重なる。 四大卒入社の伸治は、年齢的には二つ上なためか、時折、兄貴ぶった発言をする時があり、私はそれをシカトして席を立つ。 地味で悪かったわね‼︎
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