この恋、投げます!

5/8
前へ
/197ページ
次へ
あいつ__女子たちに取り囲まれ、胸の筋肉をピクピク動かしている、あいつのことか。 「好きです」 はっきり答えると、課長の時が止まった。 こうして、あの課長の色んな表情を見るのが、私は楽しくなってしまっている。 「でも、今は同僚として、ですけど」 「今は、な」 「はい今は」 それがこの先、どうなるのかは分からない。 交際の申し込みは受けた。まだその手を取るかは決めていない。 どうして決められないのか、それは__。 「いい、夫婦だな」 声に、心がこもっていた。心と、羨望が少し。 「きっと幸せになりますよ」 「ああ。自然だからな」 課長が言う自然とは、花嫁花婿の仲のことを差すのか、ここまでの経緯を差すのか。 眩しそうに余興を眺める課長。 やがて式は終盤に差し掛かり、最後にブーケトスを行うという。 女子の目の色が変わる。 私もその中の1人なのだが、なにを隠そう?名セッターだ。ブーケをボールに見立て、おおよその着地点にスタンバった。 花嫁の詩織さんが、大きく投げたブーケ。綺麗な円を描いて__私のもとへやってくる。 「そうはいきませんからね‼︎」と、横から飛び出してきた麻里奈に弾かれ、あさっての方向へ__。 「いらねーし」 __すっぽり課長の手に収まった。
/197ページ

最初のコメントを投稿しよう!

397人が本棚に入れています
本棚に追加