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あいつ__女子たちに取り囲まれ、胸の筋肉をピクピク動かしている、あいつのことか。
「好きです」
はっきり答えると、課長の時が止まった。
こうして、あの課長の色んな表情を見るのが、私は楽しくなってしまっている。
「でも、今は同僚として、ですけど」
「今は、な」
「はい今は」
それがこの先、どうなるのかは分からない。
交際の申し込みは受けた。まだその手を取るかは決めていない。
どうして決められないのか、それは__。
「いい、夫婦だな」
声に、心がこもっていた。心と、羨望が少し。
「きっと幸せになりますよ」
「ああ。自然だからな」
課長が言う自然とは、花嫁花婿の仲のことを差すのか、ここまでの経緯を差すのか。
眩しそうに余興を眺める課長。
やがて式は終盤に差し掛かり、最後にブーケトスを行うという。
女子の目の色が変わる。
私もその中の1人なのだが、なにを隠そう?名セッターだ。ブーケをボールに見立て、おおよその着地点にスタンバった。
花嫁の詩織さんが、大きく投げたブーケ。綺麗な円を描いて__私のもとへやってくる。
「そうはいきませんからね‼︎」と、横から飛び出してきた麻里奈に弾かれ、あさっての方向へ__。
「いらねーし」
__すっぽり課長の手に収まった。
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