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2コ上の同期。
仕事に対する志しが高く、その姿勢にも自分に似たものを感じていた。
お互い裏表なく、これまで仕事の愚痴や、彼女との悩みに相談に乗ったりもして。全く気を遣わない気心知れた同僚であり、同士で仲間。
伸治はきっと、付き合う相手を大事にする。
心配させるようなことはしないし、幸せになれる。
こんな私を、幸せにしてくれるだろう。
レストランでさり気なく椅子を引いたり、扉を開けて先に通してくれたり、レディーファーストもお手の物だ。
もし伸治と付き合うことになれば__。
「ごめん」
目を伏せて謝った。
「私、伸治とは付き合えない」
今度は顔を上げて、はっきりと。
同期の交際の申し込みを断った。このままのフランクな関係がいいなんて、そんな子供じみたことは言わない。
タイミングが違えば恐らく__私は差し伸べられた手を取っていたのではないか。
けれど今の私にはできない。
なぜなら__。
「課長か?」
「えっ?」
「課長のこと、好きなんだろ?」
怒ってる風でも拗(す)ねている風でもなく、いつもの伸治風に。
「そんな気がしてた」
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