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いや、なにも言ってないんですけど__。
1人、悦に入った伸治にそう切り出すこともできず、かといって外れているわけではなく。
確かに。
私の頭には、悔しいかな課長が居座っていた。
憮然と踏ん反り返っている課長と、バリアが溶けた素の課長。いくつもの顔を持つ上司の、まだ別の顔が見たいのだと、心の奥が叫んでいる。
「なら仕方ねーな。俺じゃ、まだあの人には勝てない。仕事も人間も、もっと磨いてスキル上げなきゃな」
「伸治なら出来るよ」
「その代わり‼︎」
ビシッと鼻先を指差され。
「必ずモノにしろよ。じゃないと俺が惨めだろーが」
「いや、まだそんな__」
「まだとか言ってんじゃねーよ。行動だ、行動。悩む前に動け」
体育会系発言が、心の揺れを落ち着かせてくれる。
なんだか、元気が出てきた。
「ありがとう、伸治」
「これ貸しな。大きな貸し」
「貸し多くない?」
「この俺が引き下がるんだから、特大スペシャルな貸しだろ?今度、奢れよ」
「うん、わかった」
「酒場の酒全部、飲み干してやるからな‼︎」
「実現しそうで怖いし」
私は笑った。笑い合った。
行動か__。
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