雨宿りのそのひと時

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「あ、あの、もしよかったら、これ使ってください!」 手ぶらだった美人さんに、急いでリュックから取り出したタオルを差し出す。 「でも、君のほうが濡れてるよ?」 「俺は別に。ここから家も近いので。あっ、タオルはちゃんときれいですから!」 言い訳のように早口で言うと、その人はまたクスクスと笑ってタオルを受け取った。 そのタオルで濡れた髪や服の水滴を拭う。 「タオルありがとう。洗って返すよ」 「えっ、いえ、大丈夫ですよ! 全然汚れてないですから!」 俺は何を言っているんだろう。 「あははは! お兄さん面白いね。でも水気拭いて濡れちゃったから、やっぱり洗って返すよ。家が近いってことは、きっとまた会えるだろうから」 ついに声を出して笑われてしまった事に恥ずかしさを感じていると、お姉さんはフワッと笑った。その笑顔も美人だ。思わず見惚れていたことに気が付いた俺は、慌てて目を逸らした。
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