雨宿りのそのひと時

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「向こうのほうは晴れてるから、きっとすぐに止むよね」 「ですね」 「虹、見れるかな? お兄さんは虹見たことある? ダブルレインボー」 「ダブルレインボー。って、二重になってるやつですよね」 「そうそう」 まるで前からの知人であるかのようにフレンドリーに話すお姉さんに、俺はドギマギしながらも会話のキャッチボールを返した。 遠くの晴れ間から俺に視線を移すお姉さんに、俺は小さな声で答える。 「一度、だけ」 「あれってレアだよね~。また見たいな」 無邪気に笑っているお姉さんに、俺も釣られて笑う。けれど緊張で笑顔が引きつっているのが自分でも分かった。 「お兄さん、社会人?」 「学生です。大学」 「マジで? すっごく大人っぽいよね!」 「あ、あなたは……」 「真島(ましま)(あかね)。社会人だよ。27」 年を聞いて驚いた。もっと若いと思っていた。高校生と言われても納得できるだろう。
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