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「蒼は蒼のままがいいよ。今の蒼もカッコイイと思うけど、普段の蒼のが何倍もカッコイイよ」
私が笑顔で答えると、蒼の頬がほんのり色づくのが見えたけど、腕で隠されて見えなくなってしまった。
「蒼、照れてるの?」
「お、お前が恥ずかしいこと平気で言ってくるからだろ!」
今までずっと一緒だったのに、見たことのない蒼の表情。
近過ぎて気づかなくて、遅くなったけど気づいた気持ち。
「蒼はいつから私の事好きだったの?」
「……中学から」
私が自分の気持ちに気づいたのはついさっきなのに、蒼はそれより前に気づいていた。
何でそういう感情になったのか聞いてみたら「本当にお前は恥ずかしいことを聞いてくるやつだな」なんて言われたけど、蒼は少し恥ずかしそうにしながらも答えてくれた。
中学生になった頃、周りに私達の仲をからかわれるようになったとき、蒼は「幼馴染で仲良くして何が悪いわけ?」なんて言い返してからかう男子達を黙らせたけど、本当は不思議だった。
幼馴染というだけで、何で自分はこんなにもアイツのことを気にかけて考えたりしているのか。
そう考えていくうち、自分の気持ちに少しずつ気づき始め、気付いたときには好きになっていた。
いや、もうずっと前から好きだったのかもしれない。
それから志望校も私と同じところを受けて、二人また一緒に通えるとわかったときは本当に嬉しかったんだと話す蒼は、どこか照れくさそうにしている。
その上、一緒のクラスにまでなり、これは少しでも幼馴染から抜け出さなくてはとしたのが、森川さんに聞いた私の好みのタイプへのチェンジ。
何でも私と女子達が話していたのが少し聞こえたらしくて、森川さんに聞いたらしい。
そこで入手した情報を元に実行したと聞いて、私はつい笑ってしまう。
「な、何だよ!」
「あはは、ごめん。だって、蒼がそんな風に思ってたなんて知らなかったから」
嬉しくて、愛しくて。
やっぱり私は蒼が好きだと改めて思う。
私達はもう、とっくに恋をしていた。
近過ぎて気づけなくて。
幼馴染という関係が私達の想いを遠回りさせていた。
でも、その遠回りも今日でお終い。
私と蒼はもう幼馴染なんかじゃないから。
「蒼、好きだよ」
「バーカ、俺の方が好きだっつの」
コツンとぶつかる額。
縮まる距離に鼓動が早まる。
こんなの、幼馴染じゃ絶対にないことだけど、お互いに想い合う恋人同士の今は普通のこと。
─end─
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