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遠回りの恋
私には、子供の頃からの友達がいる。
家が隣同士の幼馴染という仲で、幼稚園、小学校、中学校と一緒に通い、昔から変わらず仲のいい関係が続いていた。
中学生になったばかりの頃は難しい年頃という事もあり、周りに仲の良さをからかわれる事が増えた。
同じ小学校の子達は、私と蒼のことを長く見てきたからこんなことはなかったけど、中学生ともなれば他の小学校からも生徒が来る。
その人達にとって私と蒼は珍しくて、からかう的になったんだと思う。
「夏と蒼、今日も仲良く登校かよ。中学生にもなって毎日女子と一緒とか恥ずかしい奴等」
そんなことを言われても蒼はいつも通り私に接してくれて、男子にからかわれたりすれば「幼馴染で仲良くして何が悪いわけ?」なんて言い返してからかう男子達を黙らせた。
昔から変わらない蒼に、私達はずっとこのままなんだとどこか安心する気持ちがあった。
なのに、同じ高校を受験して二人共受かってから、蒼は変わってしまった。
入学式では何も変わらないいつもの蒼がいたのに、本格的に授業が始まりだした頃、蒼は変わった。
今まで通り一緒に学校へ行こうと蒼の家のインターホンを鳴らすと、出てきたのはピンクの髪に三つ編みをした知らない人。
ポカーンとしていた私に「おい、何してんだよ。遅れるぞ」と声をかけられハッとする。
「蒼……ですか?」
「ふはっ! なんで敬語だよ」
反応に声は間違いなく蒼なのに、あまりの変わりように同一人物なのかまだ疑ってしまう自分がいる。
二人並んで歩きながら、私はチラチラと隣を歩く蒼と思われる人物を盗み見る。
入学式の日は黒髪で、男にしては少し長めの黒髪は弄らずそのままだった。
昔から変わらないその髪型から、こんないきなり変えるなんて何かあったんだろうか。
女は失恋すると髪を切るとか言うけど、まさか男はこんな風に派手に変えてしまうとか。
「蒼、失恋とかした?」
「は? 何で俺告白すらしてないのに失恋してんだよ」
どうやら違ったみたいとホッとしたのも束の間。
今確かに蒼は告白すらしていないと言った。
つまり、好きな人はいるということなんじゃないだろうか。
だとしたら、好きな人が出来た事でイメージチェンジをしたということ。
もしそうなら、何で蒼は私に話してくれないんだろう。
好きな人がいるなんて今まで聞いたこともない。
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