『時を越えて』

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「みなさん、残念なお知らせがあります。三倉さんが夏休み中にお引越しで、別の学校に移られることになりました」  一学期の終業式のあとの帰りの会。担任教師が教卓の横に陽奈を立たせて話し出した。 「えー! 三倉さん転校すんの!?」 「どこ行くの? 近く?」  驚いて騒いでいるのは男子だけだ。女子は前もって本人に知らされていたのだろうか。 「今まで仲よくしてくれてありがとう。引っ越すのは名古屋です。遠くなっちゃうけど、よかったらお手紙ください。家がまだ決まってないので、いま住所言えなくてごめんなさい」  担任に促され、陽奈が神妙な顔で最後の挨拶をした。  会が終わって解散すると、陽奈はクラスメイトに囲まれる。 「陽奈ちゃん、ぜったいお手紙書くから! 返事ちょうだいね」 「うん、約束する。新しい住所わかったらすぐみんなに教えるから」 「夏休み、まだしばらくはこっちいるんだよね? いっしょに遊ぼーよ」 「あー、そうしよ! どこ行く?」  名残を惜しみながらも、遊びの予定で盛り上がっている女子たち。
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