『時を越えて』

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「自分だってまだ持ってるだろ、ピンクの。──陽奈ちゃん」  大学に入った年に催された小学校の同窓会。  東京(こちら)の大学に進学して来ていた陽奈を、離れてからもずっと連絡を取っていたという女子の幹事が特別に呼んでくれたのだ。  宏基は元クラスメイトである彼女に、文字通り心の底から感謝している。  五年生の当時、もし思い切って住所を聞いて文通していたら? ……おそらく、途中からはメールなりメッセージに移行することになったのだろうが。  どこかで止めたらそれきりだったろうし、続いていたら単なる『淡い初恋の相手』のままで、何も終わらない代わりに新たには始まらなかったかもしれない。  十八歳で唐突に再会したからこそ仕切り直せた関係でもある、と宏基は感じているからだ。  途切れて止まっていた時間が再び流れ出して、『子どもの頃の友達』は恋人になり、妻になった。  そして現在(いま)の、娘の美月(みつき)を加えた家族の幸せな日々に繋がっているのだ。                              ~END~
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