『透明な墓標』

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    ◇  ◇  ◇  帰宅してすぐ、化粧を落とす間も惜しんで真っ直ぐ寝室のクローゼットへと進む。  久し振りにその奥から取り出した包みを、掌の上でそっと解いた。  柔らかなベルベットの手触りに埋もれて、キラキラ輝く透明なわたしのが顔を覗かせる。  小さな小さなダイヤモンド。  落としたらすぐに何処かへと見失ってしまいそうな、──家族全員の命と引き換えにするほどの価値がある、らしい宝石。  わたしの些細な悪事なんて、その圧倒的な煌めきで陰ってしまう。見事に隠してくれる。  もしもこの先。  懐かしいお友達(あの女)の惨めな最期を見届けられたら、こんなもの用無しなのよ。そうなったら土に埋めようか川に捨てようか。  ──どうしようかな。  幼い、だけど可愛さも優しさも欠片もない、迷惑でしかなかった関係。冷えて固まった鉱物のような、強要されたのお葬式。  今から楽しみで仕方ないわ。                              ~END~
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