プロローグ

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プロローグ

 12世紀頃、琉球(現在の沖縄)の地で農耕が本格的に行われるようになると、各地に按司(あじ)と呼ばれる地域のリーダーが出現し始めた。  按司(あじ)は『グスク』と呼ばれる城を築き、そこを拠点に地域を治め、勢力争いを繰り返した。  各地でグスクが築かれたことからこの時代を特に『グスク時代』と呼ぶ。  按司(あじ)たちが争いを繰り返す中で三つの大きな勢力が頭角を現していく。 『今帰仁(なきじん)グスク』を拠点とした北山(ほくざん)浦添(うらぞえ)グスク』を拠点とした中山(ちゅうざん)島尻(しまじり)大里(おおざと)グスク』を拠点とした南山(なんざん)  グスク時代の中でも『琉球版三国志』の時代とも言えるこの時期を「三山時代」と呼ぶ。 ***  戦乱の続く三山時代の世を制したのは一隅の地方豪族『尚巴志(しょうはし)』であった。  知略戦略に長けた尚巴志は、琉球初の統一国家『琉球王国』を樹立する。 ***  尚巴志(しょうはし)の傍らには建国に欠かせぬ男がいた。その名は『懐機(かいき)』。  尚巴志の父、思紹(ししょう)が地方の按司(あじ)であった頃から父子に仕えていた懐機(かいき)は、国相(こくしょう)として琉球王国歴代5人の王に仕え、人々に尊ばれて『道球国公』とも称された。  また懐機(かいき)は、外交に長け、国際的な視点から琉球の先を見据え、王と共に国家を築き上げた。   ***  激動の時代を生きた懐機(かいき)であったが、その人となりを示す資料はあまりにも少ない。  史上における国相(こくしょう)懐機(かいき)は、人知れず世に現れ人知れず時代の表舞台から姿を消すのである。
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