記憶が無くなる熊さん

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ー幼稚園ーにて 「本当に大丈夫かなぁ~」 「今更、弱音吐くなや!……ええから見とけ」 俺は恐る恐るクッマが皆に見えるように、目立つ所へと置く 本当にこれで友達が出来るのか? そう思っていると、後ろから女の子が喋りかけてきた 「うわぁ~!可愛い熊さんだね」 「え?」 「君の?」 「ま、まぁ~」 その女の子を皮切りに周りの園児達もクッマに群がった 「うわぁ~すげぇ!」 「よく出来た熊だな」 「抱かせてぇ」 「あ……い、良いよ」 それからクッマは幼稚園で大人気となった アイツの能力かは知らない……。でも、 クッマのおかげで、俺は誰かと喋るための「話題」が出来た 初めて他人とこんなに楽しく喋れた とても楽しかった……嬉しかった。 ーその日の家路ーにて 「どや?ワシの力は……」 「う、うぅぅ…」 「な、なんで泣いてんねん!? 友達出来たやろ?……嫌なことあったんか?」 「ち、違う……う…嬉しくて」 クッマは何故か含羞(はにか)んでいた 泣いている俺を、馬鹿にするわけでもなく…… しばらく見つめて、クッマは言った 「・・・・・・ワシの胸貸したろ」 「え?」 「ほら!」 「あ…」 クッマは服の胸ぐらを掴んで、俺を自分の胸に抱き寄せた 頬に当たるふわふわとした柔らかい感触 とても心地よかった 「・・・・・」 自分より何十センチも小さいヤツに…… そうだ……小さいのに…… どうして…どうして…こんなに 「うわぁぁぁん!!」 「泣け、泣け……男でも泣いてええねん 泣き顔を人に見せたらあかん でも……ワシは人じゃないから、ワシの前でやったら正直でええねん。 今まで苦しかったな! よぉ~頑張ったな!」 励ましてくれるクッマに俺は惚れてしまった 恋愛感情とかそういうやつじゃない…… ……惚れたんだ 日が暮れるまで、田や畑が広がる道の真ん中で泣き続けた 熊……いやの胸で……。
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