亮にドッキリを仕掛けてみた。

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 世の中は残酷だ。  誰にも迷惑を掛けずに生きてきた清廉潔白な人間が、大人になったとき必ず幸せになれるとは限らない。  逆に、周囲の人を傷つけ生きてきた人間が、大人になったらさも聖人であるかのように振る舞い、幸せな人生を送ることも少なくない。  超人気YouTuber、「フルハウス」の葛城亮。  爽やかな言動とベビーフェイスで若者のカリスマとして君臨する彼が、実は学生時代は陰湿ないじめっ子だったことを、一体YouTubeを見ている人の何人が知っていることだろう。  少なくとも僕は知っている。亮はあの人の良さそうな笑顔の裏に、醜い残虐さを隠し持っていることを。  フルハウスの人気に火が付いたあの日から、僕はYouTubeを見られなくなってしまった。  突然現れるオススメ動画のサムネイルにあの笑顔が張り付いていると、どうしても辛かった中学時代がフラッシュバックしてしまうのだ。  YouTubeだけではない。僕が住むこの町はすでに、フルハウスの葛城亮で溢れ返っている。  市街地の看板からショッピングモールの中のフォトスポット、果ては通勤に使う電車の側面にまで。  亮はこの町のシンボルであり、誇りになっていた。そのせいで苦しんでいる人がいるだなんて、誰も気付きもしないのだろう。  中学時代と同じだ。僕にはもう、亮から逃れる術はない。
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