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思い出した途端、全身がガタガタと震えてきた。そうだ、自分と絆は殺されたのだ――アレに。あの、灰色のぎょろんとした目の巨人に。
何故あんなものが存在するのか。窓から入ってきたのかはさっぱりわからない。確かなのは、自分は死んだハズだったというのに、その痛みもはっきり覚えているというのに今生きているということ。生きて、何故かこんなところで見覚えのない赤いドレスを着て座っているということだ。
ふと顔を傾けた時、さらりと自分の目の前にかかった髪の色にぎょっとした。
緑色。
一般的な日本人であった自分が、こんな髪色であったはずがない。
――何か……何かとんでもないことが起きてる。常識では図れない、何かが!
とにかく落ち着かなければ。カンナはようやく、周囲を見回すということをした。
天井から吊られた小さなランプで儚く照らされるばかりの部屋は、全体的に暗い。窓もドアもない一室は、周囲の壁全てが真っ黒な暗幕に覆われているようで、何がどうなっているのかさっぱりわからない状態であるようだ。
確かと言えることは、少ない。
自分が椅子に座らされているということ。その椅子は、丸い大きなテーブルを囲むように複数設置されていて、その全てに自分と同じような派手な服装をした男女が座らされているということ。
全員が、この状況を理解できないといった様子で、不安げに周囲を見回しているということくらいである。
『皆様、お目覚めのようですのデ、説明させていただきマス』
「!」
テーブルの中央には、真っ赤なバラの花が活けられた花瓶がある。その花瓶には、どうやらスピーカーが埋め込まれていたらしい。そこから男とも女ともつかぬ、機械的な声が響き渡った。
『まずは皆様には、選択をして頂きマス。ゲームに参加するカ、参加しないカ』
ゲーム?何それ?そんな声があちらことらから上がる。カンナも勿論同じ意見だ。
嫌な予感は、びんびんにしていた。目覚めたらいきなり見知らぬ場所。見知らぬ世界で、複数の男女と一緒に暗い部屋に押し込まれているというこの状況。
まるでゲームや漫画でよく見る、今からデス・ゲームをさせられるとかいうものにそっくりなのではないか。まさか、今からここにいる全員で、殺し合いをしてくれとでも言われるのでは――。
『ゲームに参加し、勝利を掴んだ者ニハ。我らが女王に、願いを叶えて貰うことができマス。死んだ者を蘇らせることモ、元の世界に戻り死んだ事実をなかったことにすることも可能デス……』
「!?」
元の世界。
死んだ事実。
ということは、まさか。
『ただし、ゲームに敗北した者ハ、地獄に堕ちて頂きマス。女王陛下が求めるノハ、優秀な頭脳と度胸を持った“勇者”ノミ……』
それは、ただの女子高校生でしかなかったはずのカンナが遭遇する全く未知の世界――恐るべきゲームと戦いの幕開け。
『ゲームの名は……“汝は人狼ないりや?”さあ、お選びくだサイ』
あまりにも慣れ親しんだそのゲームの名前に、カンナは目を見開くことになったのである。
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