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泣きつかれて眠ってしまった少女をほおって置くわけにもいかず、私は少女を連れて一度家に帰ることにした。
家に着き、見慣れた部屋を見渡すと少しだけ安心した。
靴を脱ぎ、荷物をほおりだしてから少女を私のベッドに寝かせる。
「中々の荒れようじゃないか、泥棒にでも入られたか?」
「今日まで忙しかったから、…ちょっと散らかってるだけよ」
「ちょっと…ねぇ」
浮遊生物は物珍しそうに部屋の物を物色しながらふわり、ふわりと飛び回っていた。
人を上げる機会なんて来るはずもないと高をくくっていたうえに、この修羅場明け。私の部屋は人様に見せられるような状態ではなかった。
「それより、あなたはこの女の子のこと知っているんですよね。…この状況、どうにかできないんですか?」
「うーん、具体的には?交渉での解決?それとも無理矢理にでも解決させたほうがいいかい?」
「…できるなら、根本的に解決したいです」
時間的にも、精神的にも優れているのはこのまま少女を連れ帰ってもらうことだろう。
でも私は、それよりも少女への罪悪感と、言いしれないこのムズムズとした胸の違和感を取り除きたかった。(それに、ここで全てを解決して置かないと何度でもここに来られるきがする…。)
「なら、一度君の体をしっかりと診てみてもいいかな?私は記憶に関するスペシャリストなんだ」
浮遊生物はこの重たい雰囲気を壊すかのように、ニコニコと笑いながら長い触手をうねらせなた。
「ちょっ…何をするつもりなんですか!?やめて、来ないでくださいよ!!」
「大丈夫大丈夫、痛くないから。それにこの状況の解決にはこれが1番手っ取り早いんだよ」
ふわり、にょろり。
触手をうねらせながら浮遊生物は一歩ずつ私に迫ってくる。
「痛いとかの問題じゃなくて、生理的に嫌ですよ!!!」
私はこの場から逃げようと浮遊生物に背を向け、廊下に飛び出し、必死に外へと繋がる扉を目指した。
しかし、抵抗も虚しくドアの部に手をかけると同時に先程までの形状から幾倍にも伸びた浮遊生物の長い触手に絡まれ、体ごと持ち上げられてしまう。
「ちょっと…!本当に止めてください…よ…」
触手の中で必死にもがいていると、首筋にちくりと痛みが走った。それと同時に、体から力が抜ける、頭が回らなくなる。
最後に目に入ったのは、浮遊生物が私を、私を掴んだ触手ごと、まるで宇宙のように暗くて広い口の中にほおりこむ姿だった。
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