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大量の血を流した澪は背中をトン、と軽く押すだけで簡単に前に倒れてしまう。
「……っぱり、あなただったのね……」
血まみれになったそれから呻き声に混じってそんな言葉が聞こえた。
手には私と同じ、カッターナイフを持っている。
やはり勘づいていたか……。
ここで確実に始末しておかないと。
私はそれに近づくと、もう一度同じ場所を抉り直した。
悲鳴にも呻き声にも聞こえるその声は、この雨と雷のベールの中では助けを求めるのにちっとも役に立たない。
動かなくなったそれの死を確信した私は、もう雨で血を洗い流したカッターナイフの刃をしまい、カバンを持つと歩き出す。
ここは参拝客もほとんど来ない神社。それに加えて今は、雨のベールが私たちを包んでいる。誰からも見られる心配はない。
それが見つかるのは今夜か、それもと明日の朝か……いずれにしてもあと15分間降り続ける雨が、全てを洗い流した後だ。
そして報道されるのは、17歳の少女がまた連続殺人に巻き込まれた。犯人はまたも同じ凶器で首を掻っ切っている。それだけの事だ。
あぁ、人を、17歳という年齢の女の子だけを、同じように殺していくのって……。
「……すっごく楽しい」
私は雨の中をゆっくり歩く。もう少しこの快感に浸ってから帰ろう。
……15分くらい。そう、この雨が返血を消してしまうまで。
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