夕立と17歳の少女

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「ねぇ、帆高さんって夏生まれ?」  早速、澪の弾んだ声が聞こえてくる。 「え……うん、そうだよ。なんで?」 「渚ちゃんって名前だったから、そうかなって」 「そっか……清野さんは?」 「私も帆高さんと一緒。実は今日が誕生日なの」 「へぇ、おめでとう」 「ふふ、ありがとう。学校だと誰もお祝いしてくれないから嬉しい」 「うん……」  雨の中で、私たちの会話は進んでいく。澪の弾んだ声と、私の気だるげな声は、なんだかアンバランスだ。 「ねぇ、帆高さんの誕生日はいつ?」 「……8月だよ。8月3日」 「夏休み中なんだ……けど、帆高さんはいっぱいお友達がいるから、沢山お祝いしてもらえるんだろうなぁ……塾にも行ってるって聞いたし、他校の子もお祝いしてくれるのかな? ……本当に羨ましい」 「そんなこと……」  そんなこと、なんで知ってるの? と聞こうとしたのに遮られてしまった。 「やめて、過度な謙遜は相手を貶めるのと同じこと……私が悲しくなるだけなの」  そんなことないよ、と言おうとしたのだと思ったらしい。  それまで楽しそうに弾んでいた澪の声が、突然泣き出しそうな声になる。  ……情緒不安定な子だな。人の話も最後まで聞かないで。  私は少し苛ついた。いじめられる理由が、わかったような気さえしてしまった。 「……ごめん」  面倒くささを隠しきれず、私はため息混じりに謝る。 「いいの、気にしないで。私が卑屈なだけなのは、自分でもわかってるから」  澪は自嘲するようにそう言って乾いた笑い声をあげると、切り替えるように「そういえば」と話題を変える。 「最近この辺で起こってる連続殺人、怖いよねぇ」
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