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「……そう、だね」
私の声は震えていた。
まさか澪の口からその事件のことが出てくるなんて……。
「17歳の女の子ばかり狙ってカッターで殺してるんでしょう? うちの学校でも殺された人、いるって聞いたし……」
「ほんとに……どうかしてるよ、犯人は」
私は吐き捨てるように言う。
「……自分から話を持ち出して、怖がるふりをするなんてさ」
それから澪には聞こえないように、そっと呟く。
運良く雷が鳴り始めたおかげで、余計に澪には聞こえにくくなっている。
うちの学校で殺されたのは隣のクラスの女子生徒……澪をいじめている主犯格の女子と仲の良かった子だ。
だから犯人は澪なんじゃないか、なんて噂が校内でも囁かれている。
実際、澪はクラスでも話さないし、いじめられているにもかかわらず笑っていることがある。あの笑顔は不気味で、何を考えているのか分からない。
ホームセンターでバイトをしている友達が、澪がカッターナイフを買っていたとも言っていた。
リスカ用じゃないかと思っていたけど、そうじゃなくてやっぱり……。
「帆高さん、今なにか言った? 雷の音でよく聞こえなくて……」
「え、ううん! 17歳だけ狙うなんて、どうやって調べてるんだろう? ほんとキモいよねって」
「あぁ、そうね……そんな情報を集められるってことは、ひょっとして犯人は高校生だったり?」
その時、視界が雲を貫く光で真っ白になる。一瞬だけそこは昼間になったようだった。近くに雷が落ちたのだろうか。
「きゃっ!?」
澪の甲高い声と共に、身体を引きちぎるような轟音が鳴り響いた。
「びっくりした……この雨、本当にすぐ止むのかな」
なんだか怖くなった私は、殺人事件の話をどうにか止めさせようと、努めて明るい声で言ってみる。
「……うーん、あと15分くらいで止みそうだけど」
カバンからスマホを取り出した澪は、画面を指でなぞりながら言った。
あと15分……。
私は筆箱からカッターナイフを取り出し、澪の後ろに素早く回り込むと、澪の首筋を勢いよく掻っ切った。
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