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中学時代になり、暫くしてから美穂ちゃんは学校の不良生徒とつるむ様になり、髪の毛も脱色し、青色だとかピンク色だとかに染め始めて、スカートの丈もだらしなく長くなり、それ以上にボクとの心の距離も遠くなり始めてしたかしらねぇ。
そんな矢先での出来事だったのだけれど。
中学時代の最後の夏休みのと或る日曜日の昼下り。ボクは、お小遣いを握りしめて、最寄りのスーパーマーケットに新しい財布を買いに出掛けていたのだけれど、偶然、どこぞの不良娘と連れ立って歩いている美穂ちゃんとすれ違いそうになって………。
唐突に、ボクに耳打ちする彼女。
「………あんな、ウチ等な、昨日の昼から何も食べとらんのよぉ。………ほんでなぁ、悪いんやけどなぁ、千円でええから貸してくれへんかなぁ?」
………それって、彼女のお母さんって、育児放棄ってヤツかしら?
………んな訳、ねえだろ!
あからさまに見え透いた嘘に決まってる。
その時のボクの全財産は、五百円玉がたったの2枚。もし、千円を渡してしまうと、せっかくの財布が………。しかし、その頃のボクは、少しは躊躇いはしたものの、それでも、五百円玉を1枚、彼女に差し出してしまうのだった。
「………ボクも、五百円玉を1枚しか持ってないから。………少なくてゴメン。」
そして、彼女と別れたボクは、財布は買えず仕舞で、結局は、あろう事かその帰り道で立ち寄ったマクドナルドでマックフライポテトを買って、財布を買えなかった憂さを晴らそうとしたのだけれど。
それから、幾星霜が過ぎ………。
今となっても、あの頃の五百円玉は返って来てもいない。………でも、それでも別に構わないと、ボクはそう思ってるんだ。
…………………………………。。。
あの時、美穂ちゃん、少しだけ笑顔になっていた気がして。その眼差しが、ボクが初めて出会った頃の彼女のそれと同じに見えていた気がする。そんなクズ鉄ひとつで彼女の笑顔が見られるのなら、ピカソの『泣く女』やゴッホの『ひまわり』の様な名画を買ったと思えば良い。
………………それに。
今となっては何処でどうしているのかは詳しくは分からないのだけれど、それでも、何時までも美穂ちゃんはボクのたったひとりだけの子供の頃の友達であると、今でもそう思っているのだから………。
お互いに生きてさえいれば、いつかは必ず会えるかも知れないよね?
See you again your smile.♡♡♡
《 完 》
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