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以前に來樹がくるみに「大人爪でいいなあ」と言った時、くるみは、「丸い爪の人の方が器用なんだって。來樹ちゃん、図工得意だもんね」とにこっと笑って言ってくれた。
その時、くるみが來樹の方に顔を傾けたので、三つ編みがプラン、と空中で揺れた。くるみは、耳の両側で三段だけ三つ編みにしていて、結び目から下は、サラッとした長めに垂れたストレートしているのだ。
情報通のくるみに言われると、なんだか本当に思えてくる。
それからは、來樹も丸い爪もそんなに嫌いじゃなくなったけれど、やっぱり少しうらやましい。
「あのおばあさんの爪は……、どんな形だったかなぁ?」
來樹は少し考えてみたけれど、思い出せなかった。
「それにしても、おばあさんの手はミイラみたいだったなぁ。それにしても、変なおばあさん」くくくっと來樹は肩を震わせた。
「あれっ?」と、來樹は声を上げて足を止めた。「くぅちゃん、どうしたの?」
來樹がしゃがむと、小さな犬が腕の中に飛び込んできた。來樹の家で飼っている犬のくぅちゃんだ。
「キャンキャンッ!」と激しくほえている。
「どうしたの? そんなに鳴くなんて」來樹は首をひねった。
いつもは「くぅんくぅん」と甘えた鳴き声しか出さない。それで名前も「くぅちゃん」と名付けたほどなのだ。
「待てぃ、と言うとろうがっ」
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