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來樹が声の方を振り返ると、ドドドドドドドドドと大きな足音を立てて、おばあさんが走ってきた。ガニ股で腕を前後に大きく振り、なんとも迫力のある走り方で。
頭にはフードを被ったまま、ポンチョのすそが後ろになびいて、はためいている。あっという間に來樹の目の前に、おばあさんの姿が迫ってきた。
「お、おばあさん、どうしたんですか?」
「ゼィゼィ」おばあさんは來樹のそばまでくると、手を膝について息をついた。
「えー……っと」
まさか、家まで送るつもりで追いかけてきたのかな? と來樹はほんのちょっぴりおばあさんに悪いような気持になって、「ごめんなさい」と言った。
「なにを謝っとるんじゃ!(ハァハァ)シャキッと(ゼィゼィ)せいっ!」
「あのー、おばあさん、無理しなくてもいいですよ」
「いや、のんびりしている余裕はないんじゃ」
「キャンキャン!」
「ん? なんじゃ、この短い脚のワンコは」
「コーギーです! 脚の短い犬種なんです!」
來樹は思わずムキになって言い返した。家族も同然のくぅちゃんを、「短い脚の犬」なんて言われて、黙ってはいられない。
「コーヒー? そういえば、背中の茶色い毛がコーヒー牛乳の色に見えなくもないかのぅ? そんなことはさておき、ホレ、見ぃ。ワンコの方が分かっとるわ!」と、くぅちゃんの吠えかかっている方を人差し指でさした。
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