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(くぅちゃんのことはさておき?)と、來樹は一瞬、ムッとしたものの、確かにくぅちゃんのいつもと違う様子は気になる。くぅちゃんは來樹の腕の中で、震えながら吠えていた。
(おばあさんに吠えているのかと思ったけど、違うみたい)と來樹はおばあさんの指先をたどってその先を見ようとした。
しかしおばあさんの指に、來樹の視線はくぎ付けになった。
「あれっ?」と、來樹は見たものが信じられなくて、目をゴシゴシとこすった
(おかしい。ひからびたミイラみたいな指だったのに、枯れた枝くらいになってる!)
おばあさんの指が枯れ枝みたいなことには変わりがない。
だけど五年生で行ったキャンプのたき火に例えるなら、さっきは火を点けたらたちまち燃え上がりそうなカラカラ加減だったのに、目の前のおばあさんの指は、火を点ける前に、しばらく日に干さないといけない程度にうるおっているみたいだった。
「ほれ、早く行くぞぃ」
「え? 行くって、どこへ?」
「お前さんの家に決まっとろうが!」
來樹は断わろうとしたけれど、なぜかおばあさんは來樹を追い越して、來樹の家の方にシュタタタタタタタタターッと、忍者のように走って行ってしまった。ポンチョが背中ではためいて、正義のヒーローみたいだ。
「あっ! ちょちょちょちょ、ちょっと、おばあさーん!」と來樹も慌てて後を追いかけた。
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