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(なぜ、おばあさんはうちの方角が分かったのかな?)と思ったが、考えてみたら來樹の家は、学校からまっすぐ一本道なのだ。
その途中に、先ほどの公園もある。だからおばあさんは來樹の進行方向に向かっただけだろう、と來樹はすぐに自分の質問に自分で答えた。
それにしても、走るフォームはともかくとして、おばあさんは足が速かった。犬を抱いているにしても、來樹が一生懸命走っているのに、追いつくどころか、ぐんぐん距離が開いていく。
「待ってぇ……」と來樹は先を走るおばあさんに、つい声をかけた。しまった、と思ったがもう遅い。
「ええい、情けない声をだすな!」とやはり怒られてしまった。その上、もちろん待ってはくれない。
はぁはぁ、と來樹が息を切らせて、ようやくおばあさんに追いついた時、おばあさんは來樹の家の前で、仁王立ちになっていた。見慣れている赤い屋根の白い家だ。三角屋根に小さな窓が付いているのがかわいいと來樹は思っている。
「キャンキャンッ!」とくぅちゃんが激しく鳴いて、來樹の腕から飛び出そうとする。コーギーは胴が長いので、飛び降りてしまうと腰を傷めることがある。來樹は慌ててくぅちゃんを地面に降ろそうとした。
しかし、來樹が身をかがめた時、來樹の手のひら位の背の高さの小さなおじさんが目の前を横切った。
「きゃあ!」
來樹は尻もちを付いて、くぅちゃんに抱きついた。
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