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おじさんは、のっぽの白い帽子に白衣を着ている。來樹の家の近くにある、ひまわりベーカリーのおじさんみたいな格好だ。
(※ひまわりベーカリーのおじさんの焼く生クリームあんパンは最高!)
しかしちらりとのぞいた帽子の下の顔は、ひまわりベーカーリーのおじさんとはぜんぜん違って、毛むくじゃらだった。
(小人かな? それにしては、あの毛むくじゃらな顔はなんだろう? 無精ひげとかサンタクロースのおじさんとは違う。まるで……まるで……サルとか?それとも雪男、イエティだとかの、危険な生き物だったりして……?)
來樹は頭をブンブン振って、頭に思い浮かんだいくつもの絵を追い払った。
「み、見間違い。うん、きっとそうだよね……」と來樹は心の中で言ったつもりだったが、声に出していたらしい。
「見間違いなんかじゃないわい! 小っちゃなおじさんは、お前さんの家に入ってしまったぞ」
「どどどどどーしよう?」來樹は両手で頬っぺたをぎゅーっと挟んだ。「そんなことってある?」
來樹は家の前の歩道で腰を抜かしたまま、小っちゃなおじさんを目で探した。さいわい、小っちゃなおじさんはコックさんの帽子をかぶっていたので、目立つ。
來樹のママが大事に育てている、家庭菜園をちょこまか走っていくのが見えた。
「ああ、あーっ……」來樹はため息でもなく悲鳴でもない、中途半端な声をあげた。
「なんじゃ、どうしたんじゃ」
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