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ジワっと額に汗が浮かぶ。ジリジリと照りつける太陽が、はやくなんとかしてあげた方がいいんじゃないの、と急かしてくるみたいだ。
ママは仕事からまだ帰ってきていないから、家にはいない。けれど、「どうしてもという時」には電話をしてもいいと言われている。
(そうだ! 早く家に帰って、ママに電話しよう。それでどうしたらいいか、聞いてみよう)
よし、と來樹はつぶやくと、倒れている人物を横目で見ながら、そうっと横を通り抜けようとした。刺激を与えないように、そーっと……。ポンチョから出ている足先を通り過ぎ、腰、肩、頭。あと、もうちょっと……、だったその時。
ガシッ! と、足首を捕まれた。
「うぎゃああああっーーーーーー!」
來樹は地面から三十センチは飛び上がった。足元から頭の先まで、電気が走ったんじゃないかと思うくらい、びっくりした。
「み、水を……水をおくれぇ」というか細い声がした。來樹が飛び上がった時に、いったんは手が離れたが、着地したとたんに、また足首をしっかりとつかまれてしまった。
「み、水ですかっ!」
來樹は反射的に繰り返しながら、一番近くの公園まで、この人、歩けるかな? と思った。
足首をつかんでいる手を振りほどきたい気持ちはなんとか抑え込んでいるものの、本当は逃げ出してしまいたい。衝撃の出来事に、來樹の足はプルプルと震えている。
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