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「公園まで、一緒に行ってあげますから」と來樹もゆずらない。
歩けないなら、水筒の中の麦茶を飲ませてあげるのも仕方ないかもしれない。だけど目の前のおばあさんは、こんなに元気にしゃべっているのだから、ここから歩いて五分の三角公園まで行けないはずはないのだ。
「ウォーターサーバーの水は、冷たくておいしいんだよなー」と、來樹はゆうわくするように言った。
「ふん!」
フードの下から、おばあさんが口をとんがらせるのがチラリと見えた。唇の周りに細かい皺がよっている。子どもみたいにとんがらせた唇に、しわしわの口元。なんだかアンバランスで來樹はフフッと笑ってしまった。
「ほら、こっちです」と、來樹はおばあさんの返事を待たずに歩き出した。
三角公園には大きな樹がたくさん植わっている。だから真夏でもすずしい。來樹はおばあさんがウォーターサーバーの水を飲んでいる間、木で出来たベンチで座って待っていようと思ったのだが……。
「これはどうやって水を出すんじゃい? 蛇口はどれじゃ?」とおばあさんが聞いてきた。來樹は、おばあさんの足元のペダルを指さした。
「そのペダルを踏むと、水が出ますよ」
「ほう、どれどれ? よいせっと!」
バンッ! と大きな音がした。どこにそんな力があったのか、と思うほど思いっきり、おばあさんがペダルを踏んだのだ。
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