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とうぜん、水が吹き出す。噴水みたいに二人の頭の上まで吹き上がって……、自然のきまりとして上から下に、落ちてきた。
バシャッと來樹の頭の上に。ところが、おばあさんは驚きの素早さで横に飛びのいて、なんと被害からまぬがれていた。
「ウソでしょ……」
「あはは!」
呆然と立ちすくむ來樹の隣で、おばあさんはとっても楽しそうに、大口を開けて笑った。しかしびしょ濡れになった來樹はもちろん、笑えない。
「おばあさんのせいなのに……」と來樹は小さな声で文句を言った。
來樹は情けない顔で濡れたレモンイエローのTシャツをつまんだ。濡れたところが色が変わっていて、濡れていることがはっきり分かる。
(カッコ悪いなぁ)と思って、來樹は肩をカクンとおとした。
おばあさんは何度か試してみて、ペダルの踏み加減がわかったらしく、ゴクゴクと喉を鳴らして水を飲んだ。
「こりゃ、うまい!」
「おいしいでしょ。このウォーターサーバーは地下の水なんだって。現代版、井戸水なんだよ」と來樹は少し胸を張った。
ティーシャツはびしょ濡れになってしまったが、ただの水だ。乾けば問題はない。
そう割り切ってしまうと、行きだおれのおばあさんを助けることができた充実感がじわっと湧いてきた。
おばあさんはとっても元気そうだし、もう一緒にいなくてもよさそうだった。
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