怪しい扉の向こう側

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怪しい扉の向こう側

 朝はあんなに晴れていたのに。 昼間だってカンカン照りだったはずだ。 なのに今は。 「あー、もう髪の毛濡れた。ぐるぐるじゃん」 土砂降りの雨です。  完全に油断していた私は、当然傘など持っているはずもなく、通りすがりの軒下を占拠した。  いつも歩いている家までの帰り道。 電柱の古びた看板、消えかけた店の屋号。昔は賑わっていたであろう面影はあるものの、今は車が通る度に、振動で揺れてうるさいシャッター街となっている。 私が占拠した軒下もシャッター街に埋もれる一角だ。普段通り過ぎるだけで碌に見もしなかったけれど、この一角にはペンキ塗りたてかのような妙に真新しい扉があった。 ショッキングピンクが目に染みる。 「趣味わる……」  思わず口から出てしまった。今ひどく冷めた目をしている自分が目に浮かぶ。いったいどんな奴が出入りしているのか気になってしまう。 けれどそれよりも早く雨止まないかな、なんて思っていた矢先。 「趣味悪くて悪かったな」  いつの間にいたのだろう。フードを深く被った背の高い男が間近にいた。心なしかほんのりいい香りがするのは無視しておきたい。
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