いつもそばにいるのに

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『予め、生命の終わりは決まってる。 人間や、飼い猫、飼い犬とか 病気になるのは、自然の理に逆らうから ……そう思うのよね〜 食べたいだけ食べまくるとか 運動しないとか……』 それを言う三毛猫『春』は、また伸びをして 「うにゃー」と大きな欠伸をする。 僕は……知ってる限りの『春』の一日を ふと考える。 お母さんに、「朝」「昼」「晩」で、適度な量の ご飯をもらってる。 足りなきゃ、おやつもらってる。 家を守るために、日夜パトロール 家の中や庭で狩りをする。 夏の日、雨の日覗いた夕方にご町内散歩 おばあちゃん猫になってきて減った行動だけど、そんなことしていたよな。 無理せず、自然に逆らうこと無く……。 〜そして五年後〜 「『春』また来るね」 僕は今、高校生。 家からバイクで飛ばして数分の市内のお寺にいる。 そこは、動物霊園が敷地内にある。 三毛猫『春』は、今……ここで眠ってる いや、正確には『春』だったものが眠ってる その魂はここにはないけど…… もう五年。 三毛猫『春』の魂は何になったのか? 見た目は変わらないまま 「またね♪」 そうひとつ鳴いて目を閉じた。 小さな時からいつもいた三毛猫『春』 いなくなった喪失感は、今も忘れないけど 泣く僕に声をかけてくれたのは ぬいぐるみ猫の『春』 「『春さん』が、泣くことないってさ」 ……って。 「『春さん』とりあえず、僕の中にいるって お前がちょこっと大人になるまで」 もちろん、目が点。 口はパクパク……。 そこから、四年…… その間にぬいぐるみ猫『春』と その中にいる三毛猫『春』と、色んな冒険をしたけれど…… これはまたいつか話そう。 僕がこうして高校生になって バイクの免許とった頃…… ぬいぐるみ猫『春』からいなくなった。 もちろん、ぬいぐるみ猫『春』とも 話したり色々してるけど…… さらに一年……。 大好きな蕎麦を食べれる そんな理由で蕎麦屋でバイトして貯めたお金で自分だけのバイクを手に入れた。 お墓参りは、もちろんかかさないけど 今までは、ぬいぐるみ猫『春』にいたから 違和感ありまくり。 そうするとちゃんとお参りしろと ぬいぐるみ猫『春』通して怒られたけど。 今年何回目かの墓参り いつもいた三毛猫『春』がいないんだ。 あらためて実感するけど…… 決して、悲しくはなかった。 ほんの少しだけ、ぬいぐるみ猫にとどまって 生命の大切な事や生きる事の大切さ、 色々教えてくれたから。 今はいない三毛猫『春』 僕のそばにいつもいる ぬいぐるみ猫『春』 どちらも、大切で特別な友達だ。 これから先もずっとずっと…… [完]
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