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突然テーブルがばあんと派手な音を立てた。
茉莉衣も岡崎もびくっと身体を震わせた。二人とも音の発生源に恐る恐る目を向けると、そこにはテーブルの上に両手をついた鉄観音が立ち上がっている。ぷるぷると細かく震えており、岡崎を下からすくい上げるようにして睨みつけていた。
「辛気臭い顔しよってからに、なんやねん! こんなうまい茶ぁとおやつ食べてんのに、何腐った顔しとんのじゃコラァ!!」
関東出身の茉莉衣は関西弁に慣れておらず、その言葉の強さと、鉄観音の迫力のある怒声、そして何故このタイミングで鉄観音の堪忍袋の緒が切れたのかが分からないことが恐ろしく、自分に向けられた言葉ではないのに思わず涙ぐんだ。しかしここで泣くわけにはいかない、とぐっと堪える。
「て、鉄観音さん、落ち着いてください……ちょっと怒りの沸点がどこにあるかわからなすぎて、ワタクシも、岡崎さんも、困惑してしまいますわ……ねぇ、岡崎さん?」
「んー……すまん。うち、イラチやさかい」
テーブルを叩いた鉄観音が両手を引っ込めて、椅子に深く座り直した。素直である。
茉莉衣は岡崎の方を見た。
東北出身の岡崎は、驚いた表情で鉄観音を見ている。鉄観音の関西弁に圧倒されたようだった。その目には力がなく、光が宿っていない。
これは、いけませんわ――
「お、岡崎さん、一体どうしてしまわれたのです?」
震える声を必死に抑えながら、茉莉衣は岡崎に問いかけた。岡崎が力なく茉莉衣を振り返る。
「なんだか最近、様子がおかしいなって思っていたのです。いつもはこのシェアハウスのふわふわにこにこ癒しボーイとして名を馳せていらっしゃる岡崎さんが、全然元気がおありじゃなくて、ただのアンニュイ野郎に成り下がっていて、見ているこちらも辛いのです」
「アンニュイ野郎ってあんた……」
「もし、なにか悩んでいらっしゃるならお話ししていただけませんか? 私たち、なにか協力できるかもしれませんし、最悪の場合、鉄観音さんが暴力で解決してくださいます!」
「茉莉衣、あんたのそういうとこ、嫌いとちゃうで」
岡崎はしばし呆然としていたが、見る見るうちに目に光を取り戻し、その目には見る見るうちに涙が溢れていった。
「ま、まぁっ!」
「なんや岡崎、一体何があったんや。話せることだけでええから話してみぃ」
鉄観音が岡崎にティッシュ箱を渡すと、岡崎は涙を拭いたり鼻をかんだり、時々しゃくりあげたりしている。鉄観音は岡崎の横へ行って優しく背中をさすり、茉莉衣も、岡崎が泣き止むまで肩に手をそっと添えていた。
そして、岡崎はゆっくりと話し始めた。
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