ティータイムの告白

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その日から岡崎は遥希くんのことを変に意識してしまい、学校で会っても今までのように話すことができなくなってしまった、という。 「目が合うとドキドキして上手く言葉が出てこなくなるし、なんていうか……変な顔してるんじゃないかなって気が気じゃなくて……遥希くんにブサイクだって思われたらどうしよう、とか、つまんないヤツだとか、思われたらどうしよう、とか、いろいろ、いろいろ考えちゃって……そしたら、なんか、気まずくて一緒にいるのが……でも、ホントは一緒にいっぱい話したり、遊びに行ったりしたいんだでも難しくて……今までは普通だったのに、普通にできてたのに、それがあの日から急にできなくなっちゃった」 話しながら岡崎はポロポロ涙をこぼした。 茉莉衣は岡崎に感情移入して泣きそうになったが堪えて、鉄観音の方を見た。鉄観音は俯いて、岡崎にティッシュを渡している。そのティッシュを持った鉄観音の手が細かく震えているのを茉莉衣は見逃さなかった。鉄観音も岡崎の話を聞いて、何かしら感じるものがあったのだろう、と茉莉衣は一人で肯く。 「岡崎……」 岡崎はティッシュを受け取って涙を拭くと、自分を呼んだ鉄観音の方を見た。鉄観音は俯いて細かくぷるぷると震えている。何かを耐えかねているかのような鉄観音の様子に岡崎は戸惑った。 「あ、あの鉄観音さん?」 戸惑っているのは茉莉衣も同じで、鉄観音に声をかけたみた。しかし、鉄観音はぷるぷるしたまま答えない。茉莉衣と岡崎は思わず顔を見合わせた。 と、しばらくして、鉄観音は勢いよく顔を上げた。 「岡崎!」 「は、はいっ」 「好き、や!!」 や…や……や……… という残響が居間を支配した。茉莉衣も岡崎も、文字通り固まった。 好き、という言葉の意味は茉莉衣も岡崎もよく知っている。が、しかし、二人とも何か聞いたことのない言語を初めて耳にしたような気持ちになった。しばらく頭の中で状況を整理しようと試みるが、あまり上手くいかない。このタイミングで思ってもみない人物からその言葉が出てきた、ということだけが理解できる。理解できるがゆえに、この場に混沌の渦が巻き起こっていることも理解できる。とにかく複雑怪奇な状況に、茉莉衣も岡崎も混乱してしまった。 「えええっ!!!?」
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