25人が本棚に入れています
本棚に追加
船から見る瀬戸内海の美しい光景は、俺にしばしの安らぎを与えてくれた。
昨日の夜に受け取った彼女からの不可解な手紙・・・。
もしかしたら質の悪い悪戯かもしれない。だけどもし、彼女の身に本当に何かあったのだとしたら。そう考えるといても立ってもいられなくなり、急いで家を飛び出して、気づけば彼女が住んでいる鬼ノ子島行きの船の上に乗っていた。
しばらく間、夏の風に吹かれながらボーっと海を眺めていると、やがて船の前方に緑の山に覆われた小さな島が見えてきた。すると船のアナウンスが間もなく鬼ノ子島に到着することを伝えた。
鬼ノ子島・・・。
面白い名前の島だ。何か鬼にまつわる伝承でもあるのだろうか。俺は大学で民俗学を学んでいたため、こういった珍しい地名を聞くとついその由来を知りたくなってしまう。そういえば彼女と初めて出会ったのも、大学で民間伝承についての講義を受けていた時だった。その時にたまたま席が隣に同士になり、勇気を出して彼女に話しかけたことが、仲良くなるきっかけだった。
俺と彼女は恋に落ち。
互いに愛し合い。
そして別れた。
別れを切り出したのは、俺の方からだった。
あれからもう三年も経つのか・・・。
最初のコメントを投稿しよう!