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小さな港だった。ろくに建物らしいものは見当たらない。
その寂しい光景の中で、まず最初に目に付いたのは港に設置されている古い灯台であった。それは背が低くどこか不恰好ではあったが、しかし妙に歴史を感じさせるその出で立ちは港の風景と絶妙に合致していて、見る人に独特な風情を感じさせた。だがそれとは真逆に、その場所には明らかに不釣り合いな物がその灯台の近くに置かれていることに気づく。
大きな金の鐘だ。どうやら、あの不思議な音はあそこから聞こえてきたようだ。でもなぜあんな所に、あのようなものが置かれているのだろうか。
「あの鐘は? 」
「鐘? 」
男はこちらから視線を離し、島の方へと振り返る。
「あぁ、あれのことか・・・。あの鐘はな、呪われた鐘なのさ」
こちらを脅かそうという魂胆でおどろおどろしく言った。
「呪われた? 」
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