最終話 くとぅるふ、ふたぐん

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 男はそう言うと、こちらをギョロリと見つめた。その今にも飛び出しそうな目玉に、俺は強烈な嫌悪感を抱く。  「あなたが去られてしまうのは残念なことです。しかし、あなたにもまだ他の使命があるのでしょう。ですから仕方のないことですね。この島のことは、後は我々にお任せください。まだ奴らの残党がいますが、しかし、この地が再び我々の手に落ちるのは時間の問題でしょう。それにいよいよその時がやって来ます・・・。ではお元気で」  男は(きびす)を返し、どこかに去って行く。俺は急いで船に乗り込み、船員に早く船を出すよう急かした。一刻も早くこの忌々しい島から立ち去りたかったのだ。  船の両舷には不気味な黒い波が間断なく打ちつけていた。それはまるで海そのものが、こちらを嫌らしく嘲笑しているかのように感じられた。  しばらくすると、ようやく船は港を出た。俺はデッキの上で、どんどんと小さくなっていく島を眺めた。それからあの呪われた鐘に目をやると、どういう訳か、初めて島に来た時に船員が言っていた言葉が突然頭の中に浮かんだ。  「港に鐘があるのは、こういった島では珍しいことじゃない。昔は船の出発を告げる合図に鐘を鳴らしていたんだ。差し当たり、あれもそのような役割を担っていたんだろう」  出発の合図・・・。  だがもう終わったんだ。あれは全部悪い夢だったんだ。そう自分に言い聞かせながら、俺は耳を両手で必死に塞いだ。あの音が・・・あの鐘の鳴る音が、頭の中に聞こえてこなくなるまで・・・。  
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